みつまめ杏仁

アンリアルエンジン(UE4)でGUIを作るためにゴニョゴニョしてます。UIデザイナーの皆様の助けになれば幸いです。

キャラ絵のテクスチャを作って表示する《後編》

 

 前回の記事でRPGバトル画面風のUIを作る想定で、キャラのバストアップをテクスチャにしてUMGに仕込むところまでを書きました。その続きを作っていきます。

 材料はあらかた用意できたので、あとは実用に耐えるように関数をいくつか準備します。

 

 まずはゲームの企画仕様を元に、UIで必要な処理を考えてみます。

 

1.パーティ編成がプレイヤーによって自由にできる想定

  → キャラの絵を変えられる

 

2.職業がいくつか設定されている

  → 職業の名称を変えられる

 

3.棒状のゲージで体力量を表し、必要なタイミングで更新される

  → ゲージの長さを変えられる。ゲージは比率で増減。

 

4.棒状のゲージでスキルポイントの所持量を表し、適時値が更新される

  → ゲージの長さを変えられる。ゲージは比率で増減。

 

5.四角のスキルゲージによって、使用できるまでの時間を表す

  → 任意の量で見た目が増減する

 

6.プレイヤーが編集可能なスキルのアイコンを表示

  → アイコンの種類を変えられる

 

7.キャラを使用できるまでの間のタイマーを表示

  → 任意の値で数字が増減する

 

8.キャラの絵を待機中の見た目に変更する

 

9.キャラの絵を満タン時の見た目に変更する

 

10.スキルアイコンとゲージをチャージ中の見た目に変更する

 

11.スキルアイコンとゲージを満タン時の見た目に変更する

 

 

ひとまず思いつくのはこのあたり。

まずはシンプルなタスクをこなす役割としてごく単純な機能のみを備えた関数を用意する。

 

 

今回の作りでは、いろいろとマテリアルでいじれるようにしているので、まず最初に準備として マテリアル インスタンス ダイナミック を作ってそれを変数化する。

だらっと数珠つなぎになるので、マクロにまとめてしまって、Event  Construct につないでおく。

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中身は、マテリアルを適用したImageパーツをVariables からGetノードで取り出して、Get Dynamic Material ノードをつないだら、ReturnValue ピンより Promote to Variable を選択すると、変数が作られる。

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それをひたすら並べていく。

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順番は適当でOK。

マテリアルはダイナミック化しないといじれないのと、マテリアルを触るたびに Get Dynamic Material するのは効率が悪そうなので、先に変数化しておく。

マテリアルの準備ができたところで、関数作成開始。

 

 

1. キャラの絵を変える setCharFaceTexture

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先に用意しておいたキャラ顔用のマテリアルインスタンスダイナミックより Set Texture Parameter Value ノードをつないで、Parameter Name を セットしたら、Value ピンを関数の Inputsピン につなぐ。

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2. 職業の名称を変える setJobName

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 もらったテキストをそのままセットするだけ。

 

 

3. 体力ゲージの長さを変える setGaugeHP

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そのままマテリアルに渡すだけだけど、ゲーム内で扱う体力の値は、受け渡しの扱い方を事前に決めておかないといけない。今回は比率でいいとのことなので 0.0 ~ 1.0 で扱う想定。で直接 0.0~1.0の範囲で値を受け取る仕様。

 

キャラクターのパラメータが成長するタイプの場合、体力の値は整数で、例えば 800 とか 15000 みたいな値で管理する方が都合がいいので、どこかのタイミングで変換してやる必要がある。

この関数内で変換する場合はこんな感じになる。

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その時点での最大値も一緒に受け取ることになる。

それと大事なのが、整数同士の割り算は結果が整数になるので、1.0までの結果はすべて 0 になってしまう。先にInt型からFloat型に変換してから割り算しないといけない。

 

UIのゲージ系表示で、長さが固定の場合、この計算は割と汎用的に行うので、マクロライブラリに追加してしまった方がいいかもしれない。マクロライブラリの管理担当と相談してOKが出たので追加してみる。

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 getRatio と命名

このマクロを先の体力ゲージに組み込む。

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完成。

 

4. スキルポイントゲージの長さを変える setGaugeSP

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体力ゲージと同じマクロでつなぐ。

完成。

 

 

5. スキルゲージ使用チャージの状況を変える setSkillChargeGauge

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これだけだとゲージの増減しかできない。

今回のデザインではゲージの見た目に溜まり具合が分かりにくいので、一緒にテキストも表示するようにしている。

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0.0~1.0の値に100を掛け算するとパーセンテージになるのでそれを FormatTextノードで「%」記号を付けて書きだす。

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FormatTextノードは結構柔軟に数値を取り込んでくれる(テキストに変換してくれる)ので便利だけど、桁のコントロールが必要な場合は、間にキャストノードを挟むといい。ToTextノードを展開すると以下のような設定ができるようになる。

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チャージ量を表すとき、四捨五入や切り上げをしてしまうと、99.9% なのに 100%と表示されてクレームの元になるので、不都合な期待感を持たれないように切り捨てる。

上の画像のように設定すると、 1~100の整数しか表示されなくなる。

 

完成。

 

 

 

6. スキルのアイコンを指定したものに変える setSkillIconTexture

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スキルのID番号を Float に変換してパラメータとして渡すだけ。

完成。

 

 

7. キャラを使用できるまでのタイマーを指定した数字に変える setWaitTimerCount

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ひとまず直接パーセンテージの値で受け取ることにする。

小数点以下の桁数はデザインの都合で1桁に決めたので、この関数内で整える。

 

見た目にこだわって、小数部分の文字サイズを変えてしまったので、操作対象のTextBlockが2つに分かれることになった。

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整数部分は、Floorで小数部を切り捨てるだけ。

小数部は、まずFrac で整数部を捨てた後、欲しい桁数×10倍 して小数点を移動し、Floorで小数部分を切り捨てれば完了。

limesode.hatenablog.com

 

 

8.キャラの絵を待機中の見た目に変更する setCharWait

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9.キャラの絵を満タン時の見た目に変更する setCharReady

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10.スキルアイコンとゲージをチャージ中の見た目に変更する setSkillUseWait

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11.スキルアイコンとゲージを満タン時の見た目に変更する setSkillUseReady

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レイアウトしてみる

これで一通りの表示をコンとロールできるようになったので、画面に仮組みしてみる。

新しくレイアウト用のWidgetを作って、キャンバスにUser Createからドラッグ&ドロップして並べる。

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ドラッグするときのコツは、直接キャンバスにドロップすること。この時に中身のサイズを計算しくれる。

ヒエラルキーパネルにドロップすると、Widgetのサイズ情報がリセットされる。

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Size To Content にチェックを付ければいいだけの話なのだけれど・・・

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特に問題ではないんだけど手数が減るに越したことはない。

 

並べるときに、Anchors の設定を Bottom Centerにする。

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あわせて、並べたWidgetAligment X を 0.5 にすると中央揃えのパーツはものすごく並べやすくなる。理由は、画面中央のX座標が0になるから。

右側か左側を並べたら、片方は符号を逆にするだけでシンメトリーになる。

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  キャンバスに並べ終えたら、左から0~3の順でリネームしておく。

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グラフモードに切り替えたら変数を新しく追加する。→①

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Variable Type に先ほどキャンバスに並べたWidgetと同じ名前があるので、それを選択。→②

配列型に切り替え。→③

適当にリネーム。 →④

 

この配列にキャンバスに配置したWidgetをセットして利用する。

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こうしておくことで、ForLoopなどでまとめて処理できるようになるし、各Widgetを番号(0~3の整数)で扱うことができるので、なにかと便利になる。

 

再生するために、テスト用にレベルブループリントからViewportに書き出してみる。

CreateWidgetノードに、レイアウト用Widgetをセット。

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キャンバスに並べたまんま。

関数のテストを兼ねていろいろ値を入れてみよう。

 

 

関数の動作テスト

レベルブループリントは閉じて、レイアウト用のWidgetを開く。

まずテスト用の関数を用意。関数のグラフを開いたら、

Inputsにキャンバスに配置したWidgetを探して追加。

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入力ピンからドラッグして call で検索すると頑張って準備した関数名がずらっと出てくる。(※エディタの言語をEnglishにしている場合)

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関数をいくつか呼び出して、ランダムな値でも入れてみることにする。

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とりあえずゲージ3種とタイマー。関数名は適当に TestParam と命名

 

EventGraphに戻ってつなぐ。

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これで再生してみる。

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配列の0番を関数に渡したので、左端のものだけ変化した。

あとは名前やらテクスチャやらも試してみよう。

さっきのテスト用の関数の中に追加。

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再生。

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うまくいってる様子。

 

この状態でも機能的にはかなり実装できた。

あと残っているのは重要な「イベント」。

 

 

イベント

イベントの発生には「条件」が付くのが基本だ。「条件」は銃で言うところの「トリガー」に相当するもので、条件が満たされた瞬間にトリガーが引かれ弾が飛び出す。飛び出した弾が「活動中のイベント」になって、次に何かに当たると当たったものによってリアクションの特定のイベントが発生する。そうやってイベントがドミノ倒しのように次のイベントを起こしていく。それが「イベントドリブン」イベント駆動ってやつだ。常に全体を見張っていて起こった事象を解析し、次の行動を確定する、というのに比べると、状況に応じて必要なイベントのみが処理されていくので無駄が少ない。

 

まずそのトリガーとなる要素を仕込む。

キャラ用のWidgetを開いて、キャンバスに Buttonパーツを重ねる。

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名前に Action と SkillUse を付けた。

個人的に推奨しているのが、名前の先頭にUMGのパーツ名をそのまま残しておくというルール。そうすることで同じ名称が使えるし、そのままグループだということも分かりやすくできる。

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見た目だけを非表示にしたいので、カラーを透明にする。

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見た目より少し大きくカバーするようにしている。

ButtonパーツのDetailsタブにある緑色のイベント追加ボタンから On Pressed のイベントを追加する。触ってみて操作事故が起こるようだったら On Click に変えるといい。

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On Pressed は触れた瞬間にトリガーされて、On Clicked は一度触れ後、離れた瞬間にトリガーされる。押してから間違いに気づいた時、キャンセルできるかできないかの違い。

+ボタンをクリックすると、エディタは EventGraph に飛ばされて、一度イベントノードを作ると、次回から  +  が  View  に変わっている。このあたりからもエディタの優しさというか丁寧な作りを感じる。

 

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それぞれのボタンをクリックした時のイベント処理用のノードが置かれるので、ここにイベントディスパッチャー(イベントを起こすもの)をつなげる。

 

イベントディスパッチャーは、MyBlueprintタブの下の方で追加できる。

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これを先のイベントに Call で取り出してつなぐ。

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封筒のアイコンがつく。

f:id:hiyokosabrey:20191124131829p:plain2つのイベントにつないだら

 

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クリックされたら、この赤いイベントが呼び出され、さらにイベントディスパッチャーが通知イベントを起こします。この時点で通知先はまだ未定。

これでコンパイルして保存したらひとまず完成。

 

レイアウトWidgetの方に移って、イベントディスパッチャーを受け取る用意をする。

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テストで、クリック受け取ったら Print String ノードで画面に表示するようにしてみた。

この バインドノードが対象Widgetにある イベントディスパッチャーと紐づけ(Bind)てくれる。

バインドすることで、イベントディスパッチャーと通知先がつながるので、別々のWidgetでも通信ができるようになる。親のWidgetから子のWidgetへのアクセスはできるけど、子から親へのアクセスはできない。それを特別なルートでつなぐことができるのがこのイベントディスパッチャーとバインドと使った仕組み。

 

これで再生してみる。

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ちゃんと反応してくれている。

これで受け取った時に待機中の見た目にすればさらに雰囲気が出そう。

まず満タン状態にするために、テスト用関数の最後に、満タン状態にする関数をつなぐ。

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これで再生した時に、待機中のタイマーが消えていれば成功。

キャラのWidgetの方で初期状態を非表示にしておけばいいのだけど、関数のテストも兼ねてつないでみた。

 

クリックした時に待機状態にしたいので、Print String を入れ替える。

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これで再生してみると。

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スキルも同じようにしてみる。

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他のキャラにもバインドすれば同じように動作する。

普通につなぐとちょっと冗長(だら~っとすること)になってしまう。

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一応これで動くけどスマートじゃない感じ。

 

とりあえずテスト用関数を少しいじって、キャラ顔のテクスチャとスキルID、職業名を外から渡せるようにしてみる。

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これでテクスチャとかを個別にセットして再生してみる。

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一応完成。

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この辺からは、キャラクターのステータスを管理する仕組みと連動するので、ひとまずUIとして仕込めるのはこの辺までにしようと思います。バインドのところがスマートじゃないので、次回《番外編》を書こうと思います。

 

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ではでは

ステキなキャラ顔表示ライフを!

 

 













 

キャラ絵のテクスチャを作って表示する《前編》

 いつのまにか日も短くなって朝夕の冷え込みが堪える季節になってきました。今回はゲームUI制作のネタでもと思いたったので、キャラクターの絵をちょっと特殊な切り方で表示する方法を、架空のゲーム画面を制作する想定で書いていこうと思います。HUDなどのキャラ絵のバストアップをデザインのモックからテクスチャにしてUMGに持っていくあたりまで。

 

キャラの切り出し方について

  テクスチャは四角です。四角く切って貼るのはデジタルではあたりまえです。ゆがむことはありません。そこに技術的な何かを感じられないとダメだ、という強迫観念のようなものと日々UIデザイナーたちは悪戦苦闘しているのではないでしょうか?

 

 例えば、会話シーンなどでキャラの顔がフキダシと一緒に出る場合で、四角く切ってみたらこんな感じ。

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 確かに安定感はあります。翼や謎のブースターがついていても、問答無用でトリミングできるし、どんな絵でも確実に固定サイズできっちり揃えられる上に、アルファチャンネルを作りやすいです。

 

 一方、スマブラのバトル画面で表示されている顔アイコンとか、ちょっと前に出たファイヤーエムブレムの風花雪月の会話ウィンドウでも見かけるやつがこんな感じ。

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 やっぱりきっちりと下敷きやフレームのカタチでカットされるより、少しはみ出した方が下敷きとの距離が出て立体的になるし、シルエットに変化が出るので、アホ毛やケモミミや角などでキャラ付けしてる場合は特に効果的です。さらに見た目に安っぽくならないのがいいのです。ただ作るのが若干手間だったりします。

 

 前置きが長くなりましたが、このはみ出しタイプをPhotoshopで準備して、UE4のマテリアルで合成して、UMGでちゃっちゃと表示します。ただテクスチャ作って出してハイ終わり、だと面白くないので、架空のゲーム画面を作る体で進めます。 

  なので、先のチャットUI~の文体と被らないようにしてみたので、少々な感じの文体ですがそこは大目に見ていただけると幸いです。

 

RPGのバトル画面UIを作ることになった

お題として

  • プラットフォームは未定だけど操作はマウスクリック
  • 戦闘に出せるパーティーキャラは同時に4体まで
  • 横画面で1920x1080

ひとまずキャラ絵の表示だけなら、これだけの情報でも作れなくはないけど、もう少し詳細がほしい。プランナーと話をする。

一緒に表示したいパラメータ

  • キャラ名または職業名
  • HPゲージ ※比率が分かる程度でよい
  • SPゲージ(スキルポイント) ※比率が分かる程度でよい
  • スキルアイコン ※チャージタイプ

で、この仕様をあれこれ考えてできたのがこんなレイアウト。

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クリックできるものはナナメの◆。ただの情報は水平の ■ でルール化する。

背景の◆は半透明で、パーツをグルーピングするための要素で最終的には柄を入れたい。

これを、サイズ感を調整しながら4体分並べる。

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ターン制という指示はないけど、チャージタイプの要素があるということはアクティブになったら即アクションというリアルタイム系のプレイスタイルだと思われるので、そのへんの仕様を考慮して3つの状態(初期・途中・最大)をデザインに織り込む。

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アクティブの状態と非アクティブの状態が確実にわかるようにメリハリをつける。

今回、初期状態と最大の状態は同じ見た目ということにする。

チャージ中は、カウントアップの数字を出して待たせる。

この段階ではダメージを受けた時、スキル発動時なのどインタラクションは重要ではないので、いったんこれでプレゼンする。

 

レイアウトはOK出たので次は素材作成

無事プレゼンして了解が得られたところで、キャラ絵についてスケジュールを相談。

イラストレーターに発注するということで、作画のための仕様書を用意して渡すことにする。

いったん今回のレイアウトで決めたルールでキャラ絵のテクスチャを想定してみる。

サイズは256x256で行けそう。

そのテクスチャを基準にしてまとめると

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ライトグリーンの領域を除いた部分が有効範囲。

それと併せて、

  • バストアップ(全身は不要)
  • カット領域は表示する際にカットする
  • はみだし領域やカット領域については全キャラ共通
  • ゲーム内でしか使わないので解像度はほどほどで

などの条件に加えて、レイアウト参考用のテンプレを作り依頼。

 

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絵が上がってくるあいだに、アセットの準備を進める。

 

アセットをどう分けるかを考える。

キャラはフルカラーで透過が必要なので、256x256のRGBA各8bit 32bppのテクスチャ1枚。

背景の◆はどうするか?全キャラ共通でさらにマスクと共用できそうなので1枚。

 

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計2枚あればなんとかなりそう。

◆のグラデもマテリアルで色を付けるくらいのシンプルさの方がキャラを引き立てられる。文様をいれてもいい。

 

キャラ絵はトリミングだけで済むので後で作るとして、キャラをカットするためのマスク用テクスチャから用意する。

 

下図のような3種類のマスクテクスチャを用意するんだけど、

 

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これをR(#FF0000)G(#00FF00)B(#0000FF)の輝度としてレイヤー化。覆い焼きのリニアで加算することで1枚のテクスチャにできる。真っ黒(輝度が0)の部分は完全に透明になる。

 

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色味が重要ではないので、それほど神経質になる必要はないけど、グラデーション機能を利用する場合は、滑らかさのパラメータ―を0%にしないと、リニアにならないので注意。

 

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これをTGA形式 で書きだしたらUE4にインポートする。

 

圧縮するとエッジがガタガタになるので、Compression Settings は User Interface を選択。

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  •  sRGBのチェックを外してリニアカラーにする
  • タイリングは不要なので、Clamp を選択
  • MipMapは必要無い

この設定でアセットにする。

 

マスク用のテクスチャができたところで、キャラ表示用のマテリアルを作成する。

ここは企画資料にあったラフ絵(PNGで抜いてあったから便利)で代用する。

サイズを調整して配置を決めたら、アルファチャンネルを作る。

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まず抜きになっているレイヤーのサムネイルの上で、Ctrlキーを押しながらクリックすると、選択範囲が作られる。

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そして、チャンネルパレットから 選択範囲の保存ボタンをクリックして作成完了。

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本番のイラストがくれば差し替えるので、作業用Photoshopデータとして PSDで保存しておいてから、32bppの Targa(拡張子TGA)形式で書きだす。

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UE4にインポートする。

マスク用のとほぼ同じ設定だけど、カラーはリニアではなくsRGBを有効にする。

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テクスチャの準備ができたので、マテリアルを新しく作成。

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UMGで使うので、MaterialDomainを User Interface に変更して、ついでに半透明も使えるようにする。

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グラフにテクスチャのアセットアイコンをドラッグ&ドロップ。

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先にTextureSampleノードを置く場合、テクスチャのSamplerTypeが合わないとエラーがでるので、手間を減らす意味でこのドラッグ&ドロップが便利。あとはいい感じに加算と掛け算を駆使。

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キャラ絵は最終的にパラメータノードに差し替えるけど、今はこれで確認してみる。

 

UserWidgetを新しく用意。

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UMGのキャンバスに256x256の Imageを配置する。

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画像をセットする Brush のところにコンテンツブラウザからマテリアルアセットをドラッグ&ドロップする。

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汎用性を持たせたいので、キャラをブループリントから差し替えられるようにする。

マテリアルを再び編集。

マテリアルパラメータ用のノードとして TextureSampleParameter2D を取り出す。

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これと差し替える。

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パラメータのノードには気持ち悪いサンプルのテクスチャがセットされているので、これをサイズの小さなブランクテクスチャを別途作って差し替えておきたい。

ブランク素材は差し替え前提の汎用アセットで、メモリにロードされた際に不要な参照を持たないようにするのが主な目的。プロジェクトで共通のアセットとして管理するのがベター。

ParameterDefaults というタブが用意されているので、そこからセットできる。

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今回は 8x8の白色で、アルファチャンネルが0のテクスチャ。

これでマテリアルの編集は完了。

 

Widgetに戻ってブループリントを編集する。

マテリアルがうまくできているか確認するために、Event Pre Construct からパラメータにアクセスしてみる。

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パラメータ名を None から 書き換えて、Value のところにキャラ絵のテクスチャアセットをセットしてコンパイルすると、キャンバスの状態が変わっているはず。試しに別のキャラ絵をインポートしてやってみる。

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おなじ要領でサイズを調整してテクスチャにする。

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大丈夫そうなので、マスクテクスチャを利用してドロップシャドウ的な下敷きもマテリアルで用意する。

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このマテリアルも、キャラ絵と同じく Image の Brush にセットして使う。

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あとはテキストやら、ゲージやらを置いていく。

 

レイアウトができた。

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いまだに(4.23でも)UE4のフォントに付けられるアウトラインは、書体と表示するサイズによって欠けが発生する。フォントを手作りして頑張って回避してみるか、諦めてテクスチャにした方がいいと思う。けどテクスチャで数字のカウントを表示するのはひと手間かかるので何とかしてほしい。

 

ヒエラルキーはこんな感じ。

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HPとSPゲージはマテリアルで色替えできるようにしておく。

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今のところ、同じ仕様でただの色違いなので、マテリアルインスタンスでカラーバリエーションを作るようにする。
まずは、基本となる親マテリアル。

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ゲージを増減させるための閾値を Scalar Parameter にして、ゲージ本体のカラーを Vector Parameter で受け取るようにする。

 

これができたら、コンテンツブラウザからこの親マテリアルうえで右クリックすると、マテリアルインスタンスが作成できる。

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できたマテリアルインスタンスを開いてパラメータの部分を設定する。

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このマテリアルインスタンスをUMGのImageパーツにあるセットするとゲージのできあがり。

親マテリアルとマテリアルインスタンスはサムネイルだけでは判別できないので、アセットアイコンの下線のカラーで見分けるようにする。

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スキルアイコンは、少々特殊なゲージにしたかったのでマテリアルを専用で作る。

これは特にバリエーションがなさそうなので、マテリアルインスタンスは作らない。

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BoxMask-2D というノードが用意されていたのでこれを使うことにする。

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入力ピンのところに(V2)とあるので、Float型の値を2つまとめた Vector2 をつなぐ仕様になってるみたいだけど、Scalar でもエラーは出ない。

チャージ中と満タンの時でカラーを変えたいので、カラーを Vector Parameterにしておく。

 

あとは色味付けで、フォント用のグラデーションをマテリアルで用意する。これも汎用で使えそうなので、親を作って、マテリアルインスタンスでバリエーションを増やす。

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このマテリアルを、TextBlockのフォントマテリアルのところにセットすると、文字にグラデーションがつく。

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最後にスキルアイコン用マテリアル。

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テクスチャは1024x1024の解像度に 80x80 のアイコンが 144種。職業によって覚えるスキルの数が変動するらしいけど、とりあえず、1職業につき最大10スキル。13職業ある想定。

ゲーム中にスキルの変更を手軽にできるようなことを聞いたので、常駐させる必要がある。サイズが大きくなるが、グレースケールテクスチャ(8bit)にするとテクスチャメモリが節約できる。

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 アイコン1個のサイズが 80px なので、 1024で割ると  0.078125

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このマテリアルに スキルのID番号をパラメータとして渡してやる と、そのID番号のアイコンがトリミングされる仕組み。

 

表示するときにいくらか角度をつけて傾けているけど、斜めのままだとテクスチャ容量がもったいないので、Photoshopのスマートオブジェクトを使えば無理なく無駄なく詰めることができる。

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表示範囲を示す赤いレイヤーを置いてその中にアイコンを置く。この状態で見た目を調整。テクスチャに持っていくとき、斜め角度を打ち消すように並べる。

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スマートオブジェクトが中に持つピクセルは傾いたり回転していないので、編集する際はそのまま表示される見た目のままで作業できる。変形していても非破壊なのが素晴らしい。

 

だいたいのパーツは準備ができた。

あとは関数を用意して、キャラやスキルアイコンの差し替え、ゲージの更新などができるようになればかなり実用的になると思う。

 

というわけで、今回はこの辺でいったん終わりにします。続きは次回。

 

ではでは

ステキなキャラ顔表示ライフを!

 

 

 

 

 


 おまけ

 このネタを書こうと思い立った理由の一つに、キャラ絵をいかにキレイに表示するかというテクニックを解説している記事を見たことが無いから(個人調べ)というのがあります。

 おそらくゲーム開発の現場で一子相伝暗殺拳として子々孫々へと伝えられているのだろうと想像しています。実際そういったゲームUIの作り方なる秘伝のタレみたいなものがあればいいのですが、私自身ハードウェアの進化に付いていくために常に手探りしながら試行錯誤の毎日です。

 で、今回の手法は、圧縮テクスチャを使わずに済むなら気にしなくてもいいのですが、圧縮される場合に特に効果的です。さらに、スマブラのように、状況によって背景のカラーを変えることができます。勢力違い、プレイヤー番号違いなど、同じキャラ絵でもバリエーションを安く量産できます。

 また、圧縮するしないに関わらず、効果があるのが、シェーダーでまとめて重ねてしまうので、ピクセルシェーダー的には計算量が減るわけではないですが、表示パーツが少なくなるので、その分の処理を省くことができます。組み合わせるパーツのサイズやパラメータの扱い方によって変わるので確実に軽くなるとは言えないですが、試してみる価値は十分にあります。

 

 

チャットUIを作る

 12

 予定通りディレクターへのお披露目の時間になり、それほど広くないスペースに召集された4人が密集する。一気に湿度と気温が上がるような気がする。

 あらかじめ動作確認程度にはセッティングを済ませておいた。いつもの軽い挨拶を交わした後ディレクターに直接触ってもらう。

 「チャット画面でコメントを入力するときに、左右のどちら側に飛ばすか、という仕様に対して、2タイプのUIを考えました」

 「まずは中央で、コメントを書き終えてからどちらにするか選ぶタイプ」

 

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 適当に軽い感じのコメントを打ち込みながらうなずく。

 「ふんふん、なるほどね。いいね。はいはい」

 少し改まった感じの空気で始まったので、ややディレクターの反応も固い気がする。予定が空いていたとはいえわざわざ集まるからには、ここに集まったメンバー全員何かしら判断や決定、相談などの重要な案件であることを意識しているだろうけど、もう少し雑談から始めても良かったかもしれない。

 「もう一つは、あらかじめ入力する場所が左右に分かれてるタイプ」

 ちょっと失礼しますと言って、マウス操作でブランチノードの値を切り替えてタイプを変更して見せる。

 「え? 今ので、切り替わるの?」

 「はい」

 入力用のWidgetを2つレイアウトしておいて、表示のON/OFFを切り替えているだけだが、今の驚き様を見る限り、警戒しておくに越したことはない。

 

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  こちらのタイプも適当に文字を打ち込んで試しながら。「うんうん、なるほど、なるほど」という反応。テンションはそれほど違いが無い印象。

 

 「どうです?」

 と谷山田が訊く。

 「うん、悪くないね。企画書見てからあっという間にここまで作れるのすごいね」

 「ええ、まぁ、そこがアンリアルエンジンの素晴らしいところです」

 ここぞとばかりに、UE4推しの返答をする。

 「う~ん、選ぶとなると難しいな。どっちも機能的には出来てるし、使い勝手も悪くない。UI的にはどっちがいいと思う?」

 できれば選んでほしくない決定に向かう気配を感じていたので、ここで水を向けられるのはチャンスかもしれない。

 「そうですね、ポイントはコメントする前に、どちらにメッセージを飛ばすかが決っているかどうかだと思います。さきに決めて書き始める場合、左右に分かれたタイプの方が分かりやすいですし、とりあえずコメントを打ってから、どっちにするか決める場合は中央の方が向いてそうです。コメントを入力中に会話の流れが変わることを考えると、中央の方が状況に対して融通が利く感じでしょうか」

 まずはそれぞれのタイプが持つ特徴について、あまり重みを付けずに説明したつもりだが、ここで息を整える。少しは議論の焦点を絞れたのではないだろうか。

 そこへ「ですよね」と谷山田が続ける。

 「僕も仕様書書いた後にちょこっと考えてまして、どちらに書くかという選択って、気持ち的にいつなのかという」

 うんうん。

 「やっぱ書く前かなぁと思うんスけどね」

 「説明されんと戸惑うやろな」

 「うん、左右に分けてコメントするという仕様自体が普通じゃなくて、既存のチャットUIからしたら、なまじ踏襲しているスタイルだから初見で仕様の意図を理解できる人はいないと思うんだよ。この辺どう説明するかも考えないとな・・・」

 時間をかけて一般化したUIに新な仕様を入れることは難しい。一度慣れたものを壊すのは勇気がいる。また授業料を払わされるのを嫌ってクレームをつけられる可能性が高い。そもそも右側に自分のフキダシがくるのが定番みたいになってるから、左右のフキダシが1P2Pサイドの陣営ぽくなってるのをどう説明する・・・?ここでふとイメージが閃いた。

 ちょっと失礼、といいながら起動しっぱなしのPhotoshopのウィンドウをアクティブにする。以前に作ったデザインラフのドキュメントを開く。

 「ここは1P2Pのカラーを反映したらいけるかもしれません」

  左右のフキダシと入力用ボタンに色を付けてゆく。

 「カラーは後で調整しますんで、とりあえず・・・」

 途中で意図を察した谷山田が声を上げた。

 「なるほど!これなら分かりやすくなりますね」

 

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 「自分のフキダシも統一したカラーになりますが、自分のアイコンを見失うことはないはずなので、それほど心配ないかと」

 「確かに、確かに!」

 ディレクターの顔色が明るくなって、心なしか声のトーンも上がっている。

 

 「中央入力のタイプだとこんな感じでしょうか?」

 レイヤーの表示を切り替えてグラデーションをオーバーレイする。

 

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 「自分のコメントだけ文字の色が違うのいいかも!」

 「こうして見てると、左右の陣営がハッキリしてきて、仕様が分かりやすくなった分、中央入力タイプだっけ?この真ん中のタイプは迷ってる感があるね」

 「やっぱり、書き始める前にどちらの陣営に書くか決ってると思うんスよ」

 「だな。じゃぁこっちの左右分かれた方で行こう!」

 よし、なんとか決まった。両方実装してオプションで切り替えようとか言い出したらどうしようか不安だったけど、無事着地できて一安心だ。両方とも実装というのは、改造やら調整等メンテナンスのコストが地味に重たくなるので避けたかった。

 両サイドで入力する方が、画面は少しうるさくはなるけど結果的に分かりやすくできそうだ。中央入力のタイプはまとまっているけど、操作後の結果が想像しにくいので、操作事故の可能性も想定しないといけない。

 「ちょっとだけ改造してみますね」といってエディタを開く。

 操作しながら気になった質問を投げる。

 「ちなみに、どちらの陣営でもないコメントを送りたいときどうします?」

 考えてもらってる間にフキダシWidgetの左右反転表示するためのマクロを編集する。

 

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 ちょっとの間、ノードの編集を眺めていたディレクターが口を開く。

 「まぁ部屋を作って集まるメンバーといえば、どちらかの知り合いだろうし、まったく知らないプレイヤーを観戦することはほぼないと思うから、おのずと知人の方に付くと思う。それとなく応援って感じで。むしろ左右に分かれることで、プレイに関係ないコメントが自然と控えられたりしない?まぁ使い始めたら、意外と気にしないかもしれないし、また違った方向に向かうこともあるかもな。」

 「確かに」と谷山田が受ける。

 UIは考えつく限りの使い方を想定して設計するけど、やっぱり想定外の使われ方をされることがあるのが面白いし、怖いところでもある。

 左右に分けた入力仕様と表示についてそんなに気にしなくてもいいかもと、今更ディレクター自身が言うと身も蓋も無い気がするけど、今は試せる表現を少しでも探っておこう。

 

 次にテキスト入力Widget を開いて、キャンバス上でカラーを付ける。

 

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 「まぁ、いっかいこれでやってみて、キビシイ意見が出るようだったら、サイアク片側だけにしよう。QAメンバーに伺ってからだと遅いかな?大丈夫?」

 ディレクターはそう言いながら、チラっとリードプロフラマの南河原さんに視線を送る。

 「QAのキックオフは来月やったと思うけど、そのころはまだネットワークの準備できてないんで、今日みたいにエディタで触らせるくらいやけど。いい?」

 「あ、意見聞くだけなんで僕の方から話ししておきます。」

 この辺をさくっと融通できるディレクターのポジションは強い。

 ロケテストやユーザーテスト、フォーカステストなどのリリース前に行うテストで問題点をあぶり出せるのは理想だけど、テスターの確保やNDA(秘密保持契約)等の手続き関連、場所のセッティング、いろいろやることが多く人員に余裕のないプロダクションだと、中の人は面倒がって積極的にやろうとはしない。うちも会社規模はそんなに大きくはない。5年ほど前にQA部門が新設されたけど、常駐のスタッフは2名しかいなくて、外のQA専門会社との窓口役が基本業務だと聞いている。すでにいくつかのプロジェクトを扱っているので、それなりの経験則があると期待されているのだろう。また、QAから上がってくるレポートはすべてディレクターがチェックして、仕様とするか修正するかのジャッジを行う。そこでのやり取りで得た信頼もあるだろう。そんなQAメンバーにも意見がもらえる流れになったので、ここはありがたく受けよう。

 コンパイルが成功したので再生する。

 

  「できました。」

 「どれどれ、おー」

 さっそく入力して確かめる。

 

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 「色は後で調整します」

 「そうっスね、このカラーだとジェンダーを意識しちゃいそうです」

 「いやぁ面白いねUE4

 ここで別のアイデアを思い付いた。「ちょっとすみません」といいながら再びPhotoshopをアクティブにする。

 「フキダシの色はそのままでもいいかもしれません。」

 「エンジンの方ではこのグラデーションを置いてないのですが」

 といいながらレイヤーを操作する。

 

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 「なるほどね、フキダシの色は中立で、対立している感じはマイルドになった。」

 「ただ、背景の色味によっては効果的じゃない気もします」

 自分で思いついて試してみたものの、それほどキャッチーではなかった。

 ここで、もう一つ思いついていたのがあったので、この際試してみてもらおう。

 「あ、もうちょっと時間いいですか? いいアイデアを思いつきました」

 「いいよ」

 「適当に歓談でもしておいてください」

 何が始まるのかと、見守る空気になったけど、すぐに谷山田が話題を提供してくれたので、そこからしばし歓談タイムとなった。

 「え!マジで?!」「めっちゃ強いっス」「俺なんか」「40連したけど出なかった」「ちょ~」「!」「ほんまや!」「?」「だー」 ・・・

 

 「できました」

 

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 「おお!いいじゃんいいじゃん!普通のチャット感あるし、さりげなくボタンの色がフキダシにも入ってて、まったくの無関係じゃなくなってるのイイネ」

 「これっスよ!」

 谷山田の尻馬感のある言葉に苦笑いしつつも、手応えを感じられて気分が軽くなった。 

 「これで行きましょう」

 「南河原さん大丈夫っスか?」

 「ええんちゃう」

 「じゃぁこれで進めますね」

 「よろしくです」

 これでお披露目会はお開きとなった。

 

 結局、完全決定とはならず、少し先送りになった分は油断はできないけど、少なくともモックのせいでチャットそのものに難色が示されることはなかったし、採用さ入力方式のタイプがひとつに決まったので、この先の機能を作り込むのに迷いがなくなったのはありがたい。いくつか問題点を検討できたし、解決策も見えてきた。やっぱりモックを作ってすぐに触れるのはいいなぁ。と一人UE4のありがたみを噛みしめる。

 

 さっそくデザインの改修について、Widgetのパーツをどう変えようか考えながら、コーヒーでも買いに行こうと席を立った。あ、ついでにスタンプの進捗でも見に行ってみよう。

 

 

※この物語はフィクションです。実在の人物・団体などとはいっさい関係がありません。

チャットUIを作る

11

 再生してみると、テキストを何度か入力してうちにズレてくる。手で改行を入れる一つ前の入力タイプでは、自然とこの問題を回避できていたのだ。表示バグというやつだ。

 入力方法の違う2タイプを作ったことで、結果的にモックの段階で発見できたのは良かったが、さて、どうやって解決したものか・・・

 フキダシWidgetの高さを返すところで、UIDをセットしている部分をちょこっといじる。

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適当な文字列を入力して確認してみる。

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 どうやら自動改行が入った場合、何かしらの条件で正しく行数が計測されないということがわかった。間の半角スペースの数を変えたり、文字を変えたり、いろいろ試してみたけど、今一つこれだ、という法則のようなものにたどり着けない。入力のタイミング的なものかもしれないと思い、クリップボードに入れておいた文字列を適当なタイミングで出力してみると、これは必ず同じ値になる。ということはやはり、改行処理にかかる時間か何かが関係している気がする。Get Desired Size のタイミングなのだろうか。

 改行のルールも今一つピンとこない。適当な文字列を入力して試しているときに気づいたのがこれ。

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 2つ目の入力で aaa a aaa と入力すると短いセンテンスなのに改行された。真ん中の a が冠詞として判断されたのかと思い、アルファベットb~zに変えて入力してみたら、 i j l のアイ、ジェイ、エル については改行されなかった。文字の幅?と思ってたら、m と w でも改行されなかった。まだまだ自分の知識の及ばない世界のラテン文字文化圏のルールか何かがあるのかもしれない。こんな短いセンテンスでも改行されるうえに、サイズ取得がうまくいかないということで、より謎が深まってしまった。

 首をひねっていると、周りで人の動く気配がする。時計を見ると12時だった。もうこんな時間か。結構集中していたようで伸びをして固くなった背中と首をほぐす。よし気分転換しよう。

 

  外に出てみると、気持ちよく晴れていた。澄んだ空の色がさっきのモヤモヤした気分をいっとき忘れさせてくれたけど、すぐに思い出してしまったので、いつもの書店へは向かわず、コンビニに行くことにした。このまま歩いていると会社に戻るのを忘れてしまいそうで、できれば永遠に忘れてしまいたかったけど、早くこのモヤモヤを解消したいという気持ちが、わずかな責任感という協力を得て勝利を収めた。

 コンビニで適当な炭水化物と適当なお茶を入手。適当なルートを歩いていたらいつの間にか自分の椅子に腰掛けていた。対策を考えながらぼんやりと歩いていたので、まったく気分転換できていない気がする。適当に選んだおにぎりを食べながらノードをいじる。

 Auto Wrapping(自動改行)に頼る以上は、この処理が終ってから高さを調べればいいのだけど、それはタイミング的にいつなのか分からない。描画処理が少しでも進めば良さそうだけど、Tick使ってみるか。

 テキストを流し込んだ後の部分で接続を切る。

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 Force Layout Prepass ノードとTick をつなぐんだけど、1回でいいので、Do Once ノード入れておこう。

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 これで再生してみる。

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 ダメか。

 もう少し進めたらうまくいくのかな。ものは試しで、delayノードを入れてみよう。

まずは Duration を 0.0 で。f:id:hiyokosabrey:20191010005222p:plain

 これでどうだ?

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 お、端数が出てきた。なんか精度が上がった? でもうまくいってるっぽい。

 ちょっとスマートじゃないけどなんとかなったかな。

 

 最初から改行が入っていると問題はないので、このTick処理が負担になるようだったら、入力フォームをあらかじめ3行にしてしまうのが無難だろう。とにかくモックを仕上げて入力のタイプを決めないと。

 

 ちょうど誰かがセットした目覚ましのアラームが昼休みの終了を告げる。

 UIDの表示を戻して、谷山田を呼びに行く。ゲーム系情報サイトを眺めていた彼は声をかけるとすぐに来てくれた。入力タイプの違う2つを順番に再生して触らせる。

 「うん、うん、いいっスね。」

 「ほうほう」

 ひとしきり触ってから、

 「Dに見てもらいましょう。ちょこっと予定聞いてきますね。」

 と言って立ち上がると、鳥囃子ディレクターのところに向かった。そんなに広いフロアではないし、ほとんど人がうろうろしない職場なので、パーテーションより背が高く動く物体は目で追いやすい。

 どうやら席にいないようだ。そのまま彼は自分の席でPCに向かって操作を始めた。恐らく予定管理ソフトで予定を確認しているのだろう。しばらくして再びこちらに戻ってきた。

 「今ミーティングみたいッスね。予定入れておくんで、後でまたお願いします。」

 「分かった。」

 ということで一時解散することになり、谷山田は自席に戻って行った。コーヒーを飲みたくなったので、いつもの自動販売機コーナーへと向かう。エレベーターから降りると人影があった。

 「あぁ、なんとバッタリ!」

 目が会った。立木坂だった。

 「お、おう、おつかれ。」

 いきなりな言葉で咄嗟に切り返すことができず、動揺してしまった。疲れるから妙なタイミングでこちらの意表を突くのをやめていただきたい。

 「おつかれさまです~」

 手に何も持ってないところを見るとまだ買っていないようだ。すると、

 「あ、どうぞどうぞ。」

 少し下がって自販機の前を空けてくれた。ホットかアイスかも決めていなかったので、急に譲られても戸惑ってしまうじゃないか。

 「いやいやまだ決めてないし、お先にどうぞ。」

 と、こちらも譲り返して手振りで促すが、

 「そんなそんな、わたしもまだ決められないんで大丈夫です。」

 と、一度譲ったものは譲らないという固い意思を感じたので、さすがに折れることにする。

 「じゃお言葉に甘えて。」

 と言ったものの、さっきからのやり取りで、何が飲みたかったのかを一瞬忘れてしまい、いくつもある商品ボタンを一通り眺めてから、ようやくブラックしか飲まないのを思い出した。なんだか妙な汗が出てる気がしてアイスコーヒーのボタンを押す。

  カップが出てくるまで時間がかかるやつである。30という数字が点灯。なんとなく気詰まり感を覚えたので、気になってたことを訊いてみる。

 「そういえば、スタンプの話ってうちのプロデューサーから直々に?」

 「あ、そうです。ふらっとやってきて突然、絵描けるよね?って訊かれて、えぇ、まぁ・・・って答えたら、OKって一言を残して去って行ったんですよ。不吉な予感がするなぁって思ってたら、そのあとスグにチームメンバー全員ミーティングルームに召集されて、プロジェクト見直しの話が出て、あぁって。アイツそれを先に知ってて確認しに来たんですよ?間違ってないけどなんかみんなより先に動けるのってズルイ気がしません?」

 一気に吐き出すように返してきた。

 「アイツって・・・まぁ直前のミーティングで決定したその足で声をかけてきただけだろう?チームのディレクターもその場にいただろうし。」

 その手の話をプロデューサーが後から知ることはないだろう。なにしろプロデューサーが決めるんだから。とツッコミたくなったが、そこまで言うのはさすがにくどい気がしたので飲み込む。

 自販機のカウントが0になり、カップを匿っていた扉がぎこちなく開く。奥の紙コップをそっと取り出す。

 「まぁ、とりあえずイラストよろしく。」

 自販機の前を空けると、

 「了解です。頑張ります。」

 と明るい声で答えた。何気なく顔を見て、初めて見る笑顔に、思わずドキリとした。

 「で、決まった?」

 動揺を隠しながら、自販機を指さすと、

 「いえ、いいんです、本当はちょっとネタに詰まって、誰かと話したかっただけなんで。顔が見れてよかったです。戻りますか。」

 「え、あ、うん。」

 なぜか一緒に戻ることになり、エレベーターの矢印ボタンを押してカゴが降りてくるのを待つ。

 「わたしもアンリアルエンジン触ってみようと思うんですけど、いろいろ教えてもらってもいいですか?」

 「いいよ。」

 「家で勉強できたらいいなぁ。家のパソコンで動くかなぁ。」

 「いつ頃買ったか覚えてる?」

 買った年が分かれば、スペックについてはおおよその見当を付けることができる。

 「いつだったかなぁ?うーん。」

 そこで到着音が鳴ってタイムアップ。エレベータの扉が開くと、先に何人か乗っていて、見知った顔もあった。

 

 フロアに戻ると、予定管理ソフトから通知が来ていた。予約者が谷山田で、出席依頼に自分と、鳥囃子、南河原となっていた。場所は空欄になっている。ミーティングルームじゃないということは、おそらくチャット画面のお披露目会で間違いないだろう。集合時間まで、まだ時間があるな。だいぶ氷の溶けたコーヒーを飲む。ときどき唇に当たる氷の粒を感じながら、さっきの立木坂との会話を思い出す。いつものコーヒーと違う味がした。

 

 

 つづく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チャットUIを作る

10

 翌日は晴れて澄んだ青空が広がっていた。抱えた屈託が全て溶けてクリアになるようなそんな色。こんな青空を見ていると、どこか遠くに行きたくなる病が発症しそうになる。なんとかチャット画面のモックがそれとなく出来上がってきたのを思い出し、続きを作らないといけない使命感をサルベージしながら移動。ようやく会社にたどり着いた。

 今日は少し早く着いたのでいつもよりフロアは静かだった。PCを起動しUE4のエディタが開くまでの間に昨日帰ってから頭の中で考えていた構造を思い出す。

 テキスト入力を左右に分離させたバージョンを作るにあたって、用意するWidgetはいくつか考えてみた。

 最初、左右反転した見た目になるのであれば、フキダシWidgetのように、片側だけ作って2個置けば?というアイデアが浮かんだ。ただし片方でテキスト入力中、もう一方は触ることができない状態にする必要がある。2つが同時にアクティブになることはない。左右の入力Widget間で相互にやり取りするのはとても面倒だ。かといって親のレイアウトWidget経由も手間が増えるだけでまどろっこしい印象。

 

 ここは一つのWidgetにキャンバスパネルによって左右2つの入力部分を管理するのがよさそうだと思い至った。さらに親のレイアウトWidgetで受け取る際にバインドしている処理も変えなくても済む。

 

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 まずは今のテキスト入力Widgetを複製して、これを改造していこう。コンテンツブラウザからテキスト入力Widgetを複製する。

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 とりあえず名前を wb_WriteBox にしておこう。

 使えそうなパーツは流用する。入力用の下敷きは、いまのフキダシと同じテクスチャにして調整。ボタンは一つだけでいいので片方を消す。テキスト入力は1行入力だからMultiLineじゃないやつに差し替える。

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 大きさはフキダシの許容文字数分横に伸ばしておいてっと・・・こんなもんかな。顔アイコンは適当なやつをセットしておこう。

 

 入力開始ボタンのテクスチャはこんな感じでいいかな。

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 しばらくパーツの調整に手間取ったが、なんとか整った。このテキスト入力で必要な「状態」は3つ。

 

● テキスト入力中

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 ユーザーがコメントを入力中はこの状態。

 

 

● 待機中  [DEFAULT] 

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 入力する前の状態。左右どちらも同じ。この状態のみ入力を開始するための +ボタンが表示される。

 

 

● 非アクティブ [N/A] 

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 反対側で入力を行っている間の状態。見た目に存在感を弱く。CanvasPanelの透明度を変えるとラクチン。

 

 

 ヒエラルキーはこんな状態。

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 反対側も同じ構成になるので、キャンバスパネルを一つ追加してある。

このCanvasPanel_Left をまるっと複製して 名前を CanvasPanel_Right に変更。

見た目にシンメトリーになるように調整。

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 ヒエラルキーはこうなった。

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 入力中、待機中、非アクティブと、見た目にこの3つの状態を遷移させるためにアニメーションを使って切り替える。いきなり切り替わると味気ないので、入力開始と終了時くらいは短いながらもアニメーションを作ってみよう。状態遷移のイメージはこんな感じになると思う。

 

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 この遷移イメージを元に、左と右それぞれにアニメーションを用意する。待機と非アクティブについては、状態の記憶として利用するので、尺は不要。開始 0.0 の位置にバシっと確実に状態を切り替えるためのキーを打つだけでいい。

 

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 これをブループリントの方で組んでいこう。

 +ボタンは、前のWidgetから残したパーツで、Buttonコンポーネントだから OnClickイベントが有効だ。そこへアニメーションの再生ノードをつなぐ。まずは左側のクリック。

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 右側のクリックも同じ要領で、再生するアニメーションが変わる。

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 Widget の Buttonコンポーネントは、画面に表示されている間はクリックを受け付けてくれる。なので、クリックした直後にアニメーションで Visibility を Collapse にするキーを打っておくと必要なクリックを防ぐことができて安全。

 Play Animationノードは、再生のトリガーでしかないので、再生を開始したらすぐに次のノードに処理が流れてくれる。ただ基本的に終わりを待ってくれないので、終わってから何かする場合だけ、特別な処理が必要になる。

 

 次は投稿の処理だけど、送信ボタンが無いので何をトリガーにしようか。確かEnterキーを判定するイベントがあったはず。

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 あった。たぶんこれだ。

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  Commit Method は ENumのピンだから、判定用の Equalノードが使えそう。

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 あった!

 ということは、さっそくプルダウンを見てみると・・・

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 On Enter !

 これをブランチノードで判定すればよさそうな気がする。True の時に、用意してあった、イベントディスパッチャーにテキストのピンをつなげれば入力した内容が送信できるはず。

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 左側用だから、isLeft を True にしておく。

 右側のも同じように作ってから、テストしてみよう。

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 テストするためには、レイアウトWidgetに配置してやらなければいけない。

 と、その前にコイツをひとまずどかす。

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 Visibility を Collapse にしてしまえばいいのだけど、ここは Event Pre Construct を使おう。

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 これで、コンパイルした瞬間にキャンバスから消えてくれる。

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 ヒエラルキーの可視オプションを見えないようにすればいい。存在を戻すときはノードの接続を切るだけなので安全。

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 これで、改めて新しい入力Widget を配置できる。

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 テキストをバインドしてイベントディスパッチャーから受け取っているところがあったから、そこをつなぎ変えないと。

 今こうなってる。

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 wb_WriteBoxCenter のバインドを一時的に外して、今回追加した wb_WriteBox からバインドノードを取り出す。

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 最終的にどちらの入力方法で行くか決まれば、片方は消滅することになる。

 よし、再生してみるか。

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 よしよし、うまくいってる。

 

 でも、フキダシの開始位置が低くて重なってしまっているので、VerticalBox の位置を上にあげよう。

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 あとは、OnEnterで送信した後の処理だな。元の待機状態に戻さないと。レイアウトWidgetコンパイルして編集完了。続いてテキスト入力Widgetの方。

 

 この続きに、閉じて元に戻す処理をつないでいく。

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 左と右、順番に気を付けながら元に戻すためのアニメーションを再生していく。

 

 イベント全体はこんな感じ。

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 再生してみる。 

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  特に問題はなさそうだ。あとは顔アイコンのセットと入力の途中キャンセル、改行ができたら見せられるかな。

 とりあえず顔アイコンを渡すところを作ってしまおう。テキスト入力Widgetに受け取り用の関数を用意すればいいだろう。 

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 今はこの関数をに対してレイアウトWidgetから顔アイコンのテクスチャ渡すようにすればいい。

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 このあたりは画面の初期化処理としてイベントにしておいた方がいいかもしれない。Event Constructで処理している場合、Widget がViewportに追加された段階でデータが渡されていないといけないからだ。データの受け渡しのタイミングはネットワークが絡むと思うようにはコントロールできないことが多い。後でプログラマと相談しよう。

 

 UI表示を作る場合、Viewport に追加された瞬間に動き出すやつと、そうでないやつがある。追加された瞬間動きだすのはワンショット的に役目を果たすと消滅するタイプ。主にエフェクトとか演出系の表示。そうでない方は、基本的に常駐することになる。もう少し細かく分けると、常時表示されていて更新されていくタイプと、適宜必要に応じて呼び出されて表示するタイプに分けられる。これらのタイプを用途に合わせて設計する。プログラマに相談する際にも、この辺の分類を念頭に入れて話すとスムーズに仕様を決めることができる。と考えているのだけれど、なかなかこういった話ができるUIデザイナーが周りにいないのはさみしい。

 さて、わかりやすくコメントをつけておいて、あとで改造しやすくしたところで、次はキャンセル処理か。

 入力用Widgetの外をクリックしたら入力をキャンセルして閉じるようにしてみよう。感触が良くなかったら、キャンセルボタンを置くことになるかな。

 

 テキスト入力エリア以外のクリック判定なので レイアウトWidgetに判定させるのがよさそう。

 OnMouseButtonDown 関数をオーバーライドしてと、

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 ここに判定用のパーツを持ってくるわけだけど、Widgetのクリック検出は、Visible状態じゃないと判定してくれないので、キャンバスに何も置いていないとこの関数が呼び出されることはない。というわけで、キャンバスにテキスト入力Widgetを避けて、CanvasPanelを配置する。

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 このCanbasPanel の Visibility の設定をVisibleに 変更しておく。

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 名前を CanvasPanel_CancelArea としておこう。

 これをさっきオーバーライドした関数の中に置く。

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 レイアウトWidgetのキャンバスに置かれているすべてのパーツが検出対象で、何かあるところでマウスボタンを押すと、この関数が呼び出される。特定のパーツのみを対象にしたい。ここで判定してはじくために isHoverd ノードを使う。hover は WebページのデザインでCSSを触ったことがあるならピンとくるはず。このノードはカーソルが乗っているかどうかをブーリアンの値で返してくれるノード。テストするためにPrintStringをつないでみる。

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 コンパイルするとWarningが出た。

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 そうだ、ReturnValue が空いてるとダメなのだった。Handled ノードをつないで祈る。鎮まり給へ!

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 鎮まった。

 テストしてみよう。

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 よし、ちゃんと反応してる。

 

 今度は閉じるイベント作って、それを呼び出せばいい。テキスト入力Widgetを編集しよう。

 ただ呼び出すだけでいいのか?勝手にいろんなタイミングでクリックされるから、都合の悪い時がある。あと、入力中のやつはキャンセルするけど、非アクティブの方はすでに閉じてる。となると、フラグが要るな。ブーリアン型の変数を2つ用意しよう。

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 まずこの値をセットするはここだ。+ のButtonをクリック処理するところ。

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 このフラグを元にカスタムイベントで閉じることが可能かチェックする。

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 このあとに閉じるアニメーションをつなぐんだけど、ちょうどいい場所があった。

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 すっぽり!

 送信した直後だから、ただ閉じる処理しかしていない。で、この処理の一番最後尾でフラグを元に戻せばいい。

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 これで、テキスト入力Widget側の準備はできた。レイアウトWidgetの OnMouseButtonDown 関数に戻る。テストでPrintStringをつないでいたところを差し替える。さっき準備したカスタムイベントを呼び出す。f:id:hiyokosabrey:20191001154455p:plain

 これでOK。

 テストしてみよう。

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 よし、これで良さそうだ。あとはフキダシの改行表示かな。うまくいくといいけど。

 

 

 しばらくキャンバスのパーツを触っていると、SizeBoxにそれっぽいパラメータを発見。あと、TextBlock の改行設定を入れておく必要があった。

 SizeBoxの子供の TextBlock_Body に改行無しのダミーテキストを入れて、Wrappingの設定を変更する。

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 で、SiizeBoxの方も設定を変える。

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 まず SizeBox の Size To Content を一時的に無効にする。

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  いい感じのサイズになるようにSizeXとYを調整。

 そして、Child Layout カテゴリの  Max Desired WidthMax Desired Height を有効にして Size X と Size Y を移植する。Size To Content のチェックを戻せばOK。

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 これで大丈夫。

 テストしてみよう。

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 よかった。なんとかできた。

 

 あとはプレゼンに向けてちょっと細工を。レイアウトWidgetの送信処理のところを、2種類のテキスト入力Widgetを両方有効にしておく。

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 Event Pre Construct のところで、切り替えられるようにする。

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 コンパイルが必要だけど、ブランチノードのCondition を切り替えてコンパイルするだけで切り替えができる。確認しておこう。

 

 ?!・・・あれ?なんかスクロールがおかしいな。

 

 

つづく

 

チャットUIを作る

9

 メッセージは立木坂から届いたものだった。一時的にチームから捨てられたという表現をしていたが、まぁアイツのデフォルトの物言いなので無視しつつ、やり取りしていると、どうもスタンプの絵を描く仕事を請けたらしい。プロデューサーの手の速さに若干の不気味さを感じる。良いものにしたいという気持ちで動く分にはプロジェクトチームのメンバーとして当然だ。なぜかプロデューサーという立ち位置が個人的にあまり好きになれない。プロデューサーの職分というより、たまたまそこにいる人間との相性な気もするが。

 ただ、仕様決定の場に不在なことが多いのもあって、どうしても現場からの距離を感じざるを得ないし、外から中をつついてかき混ぜてくるような印象しか持てないのは、個人的すぎる感傷が由来なのは分かっているつもりだ。今のところ、この心象を変えてくれるほどの出会いは無い。単にプロデューサーと仲良くなればいいだけの話だと言われてしまったら、言い返せるほど経験値が高くないし、まぁ人見知りだから仕方がない。ということにしておこう。

 で、プロデューサーのことはさておき、立木坂はスタンプの仕様を教えろと言ってきた。仕様もなにも自分もさっきスタンプ機能追加の件を聞いたばかりだと返したら、

 

(立N)じゃあ表示サイズと、種類を教えてください

・・・コイツ人の話聞かないやつだな・・・

(自分)まだ決めてない

(立N)何にも決まってないのに何を描いたらいいんですか?

(自分)訊かれても困る

(立N)うーん、とりあえず猫でも描いて癒されます

(自分)じゃそれ

(立N)はーい

 

 という流れになった。なんかアヤフヤなままで不安しかないが、出来に関してはこちらから依頼したわけではないので、いったんモックの完成を目指そう。やることは増えたが素材を用意する手間は省けたのはありがたい。絵の内容はまた別途すり合わせの時間をとればいいだけのことだ。後でスケジュールの確認もしなきゃな。

 

 さて、ここまでできたけど、なんか忘れてるものがないか、

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 ラフはどんな感じだったかな。

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 そうだ、左右の振り分けが簡単にできたせいで、この < > を置くの忘れてた。

 自分のコメントに色を付けるのは簡単だ。ストラクチャから値を引き出せるようにしたから、すでに要領は得ている。サブメニュー表示はちょっと重めなのと、レイアウトが安定してからにしたい。ここは、 < > を作っていこうか。

 とはいえ、これは少々作り替えが必要だな。

 

 現状、フキダシWidgetは必要最小限のサイズでしか表示していない。そして、横幅が画面サイズと同じ Vertical Box に対して AddChild している。 さらに、isLeft というブーリアンの値でもって、setHorizontalAlignment ノードを使って左右にレイアウトしている。

 

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 ここに < > を表示しようとすると、①重ねて出すか、②VerticalBox を2つ左右に分割するか、③フキダシの方に追加するか。今思いつくのはこの3つ。

 ①の重ねて出す方法は、新しく< >の専用Widgetを作り、フキダシ追加に合わせて一緒に追加。Y方向にマイナスマージンの値を入れれば実現できそうだ。当然フキダシの高さが可変なので、値を調整してやる必要がある。

 ②は左右が独立することになるため、同じ高さを維持できさえすれば、シンプルなつくりが期待できるが、2つのVerticalBoxにアクセスすることになるので、その切り替えがちょっと面倒な印象。

 ③は、フキダシWidgetのレイアウトをいじるだけで解決できそうなので、今のしくみから大きく変わることはない。ただし、左右の振り分けではなく左右反転になる。

 

 あとは、スクロールアウトした際の処理だけど、①と②、どちらも別々のWidgetが追加されているので、画面から消すときに常に2つづつ消すことになる。③は今まで通り。

 

 これはチャットのUIだ。時系列で過去から現在にかけてリニアに並んでいる。余計な要素は入れない方が、サーバーとの差分が無い分シンプルに管理できるはず。発言順がそのまま表示順になっていた方がチェックがラクだし、なにより表示する側の都合でしかないのに、システム側に表示側の都合に合わせろというのは、後々のことを考えると経験から言ってリスクである可能性が高い。

 ここは③のフキダシWidgetに手を加える方法で進めていこうと思う。

 やることは今のレイアウトにパーツを追加することと、フキダシのサイズ可変に同調できることがゴールだ。左右反転については、フキダシWidgetの中でやってるので、むしろレイアウトWidgetでやってる左右振り分けが不要になるはずだ。

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 縦方向の可変イメージはこんな感じ。

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 さっそく < のテクスチャを作ってインポートする。

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 とりあえず、SideArrow と名付ける。

 これをキャンバスに配置するわけだけど、まぁ試しながらやってみるか。

 

 Size to Content の仕様と、アンカーのストレッチに悩まされつつ、1時間ほど試行錯誤を繰り返してようやくなんとかなった。と思う。

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 フキダシの下敷き画像は、親のキャンバス(CanvasPanel_Container)にサイズ依存していたので、SizeBox以下とフキダシの下敷き画像を、新しく追加したキャンバスパネル(CanvasPanel_fukidashiBody)でくるむことで、階層的に一段下げた。そしてその CanvasPanel_fukidashiBody と同階層に SideArrow  を追加するのだが、親キャンバス(CanvasPanel_Container)のSize to Contetnt が利いているせいで、サイズの変化するフキダシに対して、右端をアンカーとした SideArrow が配置できない。そこで、SideArrow も サイズ固定した CanvasPanel でくるむことで位置を確保。

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 危なかった。一瞬あきらめかけたけどなんとかなった。

 

 あとは、レイアウトWidgetの方を編集。フキダシWidgetを追加する関数のところで左右振り分けの処理をバッサリ。

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  こうやってノードが減ってスッキリすると気持ちがいい。

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 これでいけるだろう。

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 何度も再生して、そのたびに落胆してきたので、感動するより安堵の溜息が出る。ようやく想像通りになった。この辺はもっといろんなUIを作って経験を積むしかないなと改めて思う。

 

 あとは、自分のコメントに色を付ける処理か。これは、判定するのは表示側ではないのと、作るとなっても大してコストがかからないので、後回しにしよう。それより真ん中のテキスト入力部分が見た目に重いので、ホバー処理を入れてみたい。普段アルファ値で薄くなってて、カーソルが乗ったらハイライトする。

 

 テキスト入力Widget は レイアウトWidget で管理してるから、そこでホバーの判定を取ってもいいけど、すでにEventTickでスクロールの制御をしてるから、今はまだあまり複雑にはしたくない。やっぱりテキスト入力Widgetの方でやるか。外すときも簡単だ。

 パーツを抱えている親のキャンバスに対して、Is Hovered ノードで判定を取る。on Hovered みたいなちょうどいいマウスイベントはなさそうなので、 EventTickで毎フレームチェックする形になる。処理負荷が心配だけど、後でプログラマに相談しよう。

 

 まずはこんなところか。

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  Render Opacity は、キャンバスに使うと、配下の子供たちにもフェードが掛けられるとても便利なパラメーターだ。

 

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 こちらは詰まることなく予想通りにできた。

 

 ふと辺りで人が動いているのに気付いた。自分の位置からはフロアの扉は見えないが、ばたばたと立て続けに出入りする音でわかる。もうこんな時間か。時計を見たら急に疲れが出てきたような気がする。キリがいいから、今日はこの辺にしておこうか。ここまでくれば、テキスト入力を左右個別に配置するタイプを作ってもいいと思う。

 よし、帰ろう。帰り支度をしてフロアを出る。

「お先に失礼しま~す。」

 

 外に出ると雨は止んでいた。薄く雲が残っていて、ぼんやりと残照を拡散していてまだ明るい。急に腹が空いてきた。晩飯について考えながら駅に向かって歩き出した。

 

つづく

 

 

 

 

 

 

 

チャットUIを作る

8

 近くに窓が無いので外の様子が分からないが湿度が高い。帰るまでに雨がやんでるといいんだけど。エレベータを待つ間、ホットにしようかアイスにしようかな迷ったけど、それほど喉が渇いているわけではなかった。少し体が冷えた感じがするので軽くストレッチをして戻ることにする。

 画面丸ごととなると表示するものが多いから結構かかるよな。今日どこまでいけるかな。フキダシの見た目だけでももうちょっと何とかしておきたい。そんなことを考えながら伸びをしていると、カゴが到着する音が鳴って慌てて体勢を整える。ボタンを押してたのを思い出した。幸いドアが開いたけど誰も乗ってなかったので、無駄に乗らなくて済んだ。

 

 さて、まずはフキダシにシッポを付けないとな。Photoshopをアクティブにするとフキダシの作業用ドキュメントが開いたままになっていた。左側のフキダシがデフォだから、画像サイズを右寄せで拡張して、88x64pxくらいかな。

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 シッポを付けたいけど、ちょっと角削りすぎたか。調整して・・・

 

 サイズが可変にできるよう Boxで指定しているので、分割位置を小数で割り切れるように調整するのが面倒だったけど、どうにかできた。

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 これをそのまま上書きして、Reimportする。

 

 Reimportしたら、フキダシWidgetを開いて、パラメータを書き換えないといけない。

 分割の指定はMarginのところで行う。まず、左上から Left と Top が 0.625 なので、残りは どちらも 0.375だ。

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 やっぱり少ない桁で割り切れると気持ちいいな。職業柄 UVを扱って長いので小数点耐性には自信がある。UI制作では小数点で指定することが多かったからだ。そういえばカラーも最近は 0.0~1.0で扱う機会が増えている。

 

 テキストの位置がずれたので、SizeBox にある Paddingで調整する。

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 ここに、顔アイコンも入れておくか。サイズは 80x80 くらいでいいかな。

 その分、フキダシとSizeBox を右に移動。

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  フキダシはOffsetX、SizeBoxはPositionXに80を入力する。

 

 ひとまずこの辺でいいだろう。編集モードをグラフに切り替えて、新しく変数を追加する。顔アイコンを受け取るためだ。Textrue2D 型で、Expose on Spawn にチェックを付ける。

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 コンパイル時に警告が出るので、 Instance Editable にもチェックを付けておく。

 キャンバスに追加した顔アイコンのパーツをGetで配置して、EventConstruct の最後でテクスチャをセットする。

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 Set Brush from Texture ノードに、さっき用意した変数もつなぐ。

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 これで受け取り準備完了。

 いったんコンパイルして保存しておく。

 

 

 レイアウトWidgetに戻って、フキダシWidgetを追加するイベントを確認。Create Widgetノードの上で、Refresh Nodes を行うと、ピンが増える。

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 ここに顔アイコンのテクスチャをストラクチャから取り出して渡せばいい。

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 コメントのテキスト入力ピンが New Var 0 のままだな。ついでに変えておけばよかった。

 

 この辺で様子を見てみようかな。

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 しまった! 横着してたの忘れてた。テキスト入力用の下敷きを専用で作ってやらないと。

 

 ・・・

 

 気を取り直して再生。適当に入力して試してみる。

f:id:hiyokosabrey:20190902221001j:plain

 右側の時だけ、並びを逆にしたいな。さてやり方はどうしよう。

 

 思いつくのは2つ。今フキダシWidgetを「左専用」にして、新たにフキダシWidget「右専用」を作るか、Widgetは増やさずに今のフキダシWidgetの中でレイアウトをタイムリーに「スイッチ」する処理を追加するか。

 

 ひとまずスイッチするのを考えてみよう。フキダシWidgetを開いて編集モードをグラフにする。isLeft のフラグを受け取ってから左右だけ入れ替えるマクロでも作って入れよう。その前に、フラグを受け取る変数を用意しておかないと。これもExpose on Spawn だな。変数名は、アセットが違うので同じで大丈夫。

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 まずこれでコンパイルして保存。あ、ついでに New Var 0 だった変数名も変えておこう。テキスト型の変数を、commentBody に変更して、改めてコンパイルして保存する。

 レイアウトWidget を開いて、CreateWidgetノードを確認してみると、New Var 0 のピンが赤くなってる。f:id:hiyokosabrey:20190902231151p:plain

 右クリックして Refresh Nodes すると色が戻った。接続が切れるのでつなぎなおして、増えたピンにストラクチャの isLeft をつなぐ。

f:id:hiyokosabrey:20190902231614p:plain

 これで、左か右かのフラグがフキダシWidgetに渡されるようになった。レイアウトWidgetコンパイルして保存。

 

 再びフキダシWidgetを編集。スイッチ用のマクロを作ろう。名前は switchSide でいいか。

f:id:hiyokosabrey:20190904212655p:plain

 Inputs と Outputs に Exec ピンを一つずつ追加。

 これを Event Construct のところに差し込む。

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 さて肝心の中身だけど、どうしようかな。ひとまず左右反転してみるか?アンカーいじるのややこしそうだし。Render Transform でひっくり返してみよう。中のテキストはもう一回ひっくり返せば元の見た目に戻るはず。裏の裏は表だ。ひっくり返すのはこいつら。

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 左右どちらかというのは、 ブーリアンの変数 isLeft が受け取っているはずだから、そこから select ノード使えばいけそう。2つの状態に応じて値を振り分けるのはSelectノードが本当に便利だ。 isLeft が false の時だけひっくり返せばいいから、

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 こんなとこかな。フキダシWidgetの編集は完了。

 

 さっそく試してみよう。

f:id:hiyokosabrey:20190904214315j:plain

 おお!いいねいいね。

 あ、そうか。顔アイコン白いままだから気にならなかったけど、顔アイコンとかもひっくり返さないといけなくなったな。ひっくり返すものが増えてくると、罪悪感みたいなものが膨らんでくる感じがする。SizeBoxのアンカーを右にしたときにうまくいくか試してみないとわからないな。フキダシの大きさを可変にしたから難易度が上がってしまった。アンカーの設定から見直す必要がありそうだ。この辺は追々詰めるとして、今は先に進もう。

 

 顔アイコンのダミーでも用意してみるか。なんかフリーで使えそうなのないかな。

 しばらくネットを検索結果を行ったり来たりして、まぁ結局いつものとこで調達。ほんとにいつもお世話になってます。手を合わせて心の中でいただきますと呟く。

 透過のPNGPhotoshopでリサイズ。たくさんあるアセットの設定変更は、Asset Action > Bulk Edit via Property Matrix... が便利。一度Importしてから、コンテンツブラウザ上でまとめて選択して右クリックメニューから選ぶ。画像を用意するのに時間がかかったけど、16個のインポートはサクッと終わった。

f:id:hiyokosabrey:20190904224419p:plain

 このアイコンたちを、レイアウトWidgetからフキダシWidgetに渡せばいいだろう。今は左右の矢印ボタンをクリックすると、テキスト入力Widgetとバインドしてイベントディスパッチャーで受け取ってるところがある。そこからフキダシの追加を実行している。

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 まだテスト用だから、コメント入れておこう。イベントの名前も CustomEvent_0 のままだと役割が分かりにくいので、recieveComment に変えておく。

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 ここのMakeノード(ストラクチャ用)にテクスチャ2D型のピンがあるからここにつなぐ。そのためにまずはテクスチャを配列にでも入れようか。新しく変数を追加して配列にする。一度コンパイルしてから、16個分の+ボタンをクリックしてエレメントを増やす。テクスチャはプルダウンから選んでもいいし、コンテンツブラウザからドラッグするか、矢印ボタンを使ってもいい。

f:id:hiyokosabrey:20190904231648p:plain

 数が少なければ検索するけど、多いのでドラッグしよう。

 

 配列が用意で来たらグラフに取り出して、GetノードとつないでMakeノードにつなぐ。このままだと 0番のテクスチャしか使われないので、雰囲気を見るためにランダムノードを使う。f:id:hiyokosabrey:20190904232927p:plain

 さっそくテストしてみよう。

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 かなり雰囲気出てきた。どの顔が出るかわからないながらテキストを打ってみたけど、男の子?以外はキレイに左右に分かれてしまった。うん、確かに顔の向きが反転されていない。

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 マクロに顔アイコンのパーツも追加するか。

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 これでどうかな?同じ顔が出るようにランダムノードいったん外して見てみよう。

f:id:hiyokosabrey:20190904234630j:plain

 OK。じゃこの流れでUIDも追加しよう。

 

 テキストブロックをフキダシに追加して、パーツの位置を調整。文字の色はこんな感じかな。小文字が使えたはずだから、ディセンダに注意しないといけない。gyjを追加してみる。

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 ちょっと被るけど、これくらいならいいかな。ベースラインから下に伸びる文字はいくつかあるけど、意図的に組まない限り出現頻度はそれほど多くない。そこを心配してベースラインがフキダシから離れる方が塊り感が弱くなるのでよろしくない。離れていても、アウトラインや下敷きでグルーピングする方法も採れるけど、チャットなので、縦方向に積み上がっていくことを考えると、あまり上下に無駄な空間は作りたくはない。まぁ画面が採用されて本実装となったら、このまま微調整するか、デザインを見直してもいい。

 TextBlockは Size to Content にチェックを付けておく。これは、サイズを固定すると、余白ができるし、反転した時見た目のズレを、修正する処理が必要になるからだ。

 

 キャンバスはこれでいいとして、UIDを受け取る変数を追加しないと。

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 これも、Expose on Spawn と Instance Editable にチェックを付けておく。

 次はグラフに、これを書き換える処理を追加しよう。場所は EventConstructの最後に追加でいいかな。

f:id:hiyokosabrey:20190907092007p:plain UID文字列の内容によってフキダシの高さは変化しないから、一番後ろで大丈夫だろう。で、反転対策を入れれば出来上がり。switchSideマクロを編集する。

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 フキダシWidgetの編集は一旦完了。受け取る方の準備ができたら、つぎは値を渡す方。レイアウトWidget の CreateWidgerノードをリフレッシュする。

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 だいぶ混線してきたな。そろそろ、受け取るフキダシWidgetの変数もストラクチャにした方がスッキリしていいかもしれない。よし一気にやってしまおう。

 

 

 フキダシWidgetスッキリ受け取り改造作戦開始。

 まずフキダシWidget側に変数を追加。もちろん Expose on Spawn と Instance Editable にチェック。

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 つぎにバラバラと個別に追加した変数たちを、グラフから取り除きつつ、このストラクチャから取り出してつないでやればいい。まずはマクロのブーリアン型 isLeft。マクロの中ではなく、外から入力ピンとして受け取れるようにする。

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 ストラクチャの内容を取り出してつないでいくんだけど、どうしようかな。

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 ここから、あちこちにラインが伸びていくのが想像できる。そうだ、これを個別の関数にしてしまおうか。いったんこれを Collapse to Function する。

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 関数名は getSideFlag としておこうか。Return ノードを取り出して、そこへストラクチャの isLeft だけを刺してやる。

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 関数の仕事結果を返す Returnノードは、ピリオドで検索できるので便利。この関数をイベントグラフのマクロのところにつないでやる。

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 同じように、他のコメントや顔アイコンのテクスチャとかを関数化しよう。関数って複製できたかな。どうやらできるみたい。

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 ばばっと複製して、Outputs のピンを差し替えればよさそうだ。Duplicateすると関数のグラフに切り替わって、関数名の変更を要求してくる。このあたり、良く設計されているなといつも感心させられる。エディタ作業においてのヒューマンエラーが時間のロスであることを心得ているかのようだ。実際にプロジェクトで使われて叩き上げられてきた結果だろう。

 コメントとUIDについては表示するときにText型にするので、この関数内でキャスト(型変換)しておこう。

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 一度String型のまま Returnノードに刺して、出力ピンを作ったあと、接続を切って、Detailタブから変数の型をText型に変える。そして改めてストラクチャのBreakノードからつなぐとキャストノードを入れてくれる。こうするとReturnノードの出力ピン名が分かりやすくなる。まぁReturn Value のままでも不都合があるわけはないので好みの問題か。

 イベントグラフに戻って関数をつなぐ。

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 この調子で差し替えていこう。

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 スッキリ。

 全体を眺めてみる。

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 これで、使わなくなった変数を消してフキダシWidgetの編集終了だ。

 

 さて、次はレイアウトWidgetを開く。

 

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 予想はしてたけど、ちょっと禍々しい感じ。ここは Refresh Nodesの出番だな。

 

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 Breakeノードは isLeft を別のところで使っているので、ノードをなくすことはできないけど、▲ボタンで少しだけ縮めることができる。

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 かなりスッキリできた。やっとテストできる。

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 よしよし。今のところいい感じに進んでる。にやけそうになりながら、適当なコメントを入力して一人チャットを楽しんでいると、後ろから声をかけられた。

「どうすか?」

 谷山田か。「おう」と軽く返事をしつつ手を止めて振り返る。

「メッチャできてるじゃないすか?僕もちょこっとだけ触ってみていいすか?」

 座ったまま少し横に移動し、キーボードの前を開けてやると彼は軽快にキーを叩きだした。

「いいすね。メッチャそれっぽい!」

 後は、と言いかけた時、

「鳥囃子さんに見てもらいましょうか?」

「いや、まだできてないとこあるし。もうちょっと」

 まだ見せられるとこまでできている実感がなかったところへ、突然見せようと言われると躊躇してしまう。確かにある程度のチャット感は出てきたと思う。谷山田が声をかけてきたのは、それが顔に出てたのかもしれないな。

「試してみたいことあるし、形になったらまた声かけるよ。」

 こういった返事は、こちらがいいって言うまで見るんじゃねぇよ、という意味合いを滲ませてしまうので、違う言い方にすればよかったと、口に出してから気づく。

「ですよね、突然ですみません。」

 なんとなく察したか。

「楽しみにしてます。それはそうとして、相談があるんですけど。」

「?」

「スタンプを送れるようにできたらなぁと思うんスけど。いけます?」

 なるほど、これが声をかけてきた目的か。とりあえず即答は避ける。

「うーん。そうだなぁ。」

 UMGのテキストは途中に絵文字やアイコンを混ぜるのは難しい。どちらか一方のみの送信なら。

「コメントかスタンプか、モード切り替えみたいにしていいならそんなにかからないと思う。」

 谷山田の顔がぱっと明るくなった。

「まじっスか?じゃぁまたどんな感じになるかできたら、ちょこっと見せてもらっていいスか?」

「わかった。ところで、そのスタンプ誰が描くの?」

 今のプロジェクトチームにUI担当は自分しかいない。イラストを描くようなデザイナーは今キャラ作成に追われて余裕がないはずだ。 なんとなく自分にお鉢が回ってきそうな気がしたので確認してみる。

「実は鳥囃子さんから聞いた話ですけど、チャットやるならスタンプが欲しい、とプロデューサーが言ってきたそうなんス。ご褒美アイテムとか限定プレゼントとかで使えそうじゃん。て言われたとか。」

 ま、ありそうな話だ。まだ肝心な答えを聞いてないので、だまって次を促す。

「で、もちろん人くれるなら、って鳥囃子さんが条件を付けたそうなんですけど、わかったと。」

「トリさんもやる前提かよ。」

思わずニックネームが出てしまったが、突っ込みを入れたくなったのですかさず返す。

「チームポテイトがいったん企画から練り直しになったんで、デザイナーを一時的に開放するらしいんス。」

 あ、チームポテイトといえば立木坂のいるとこじゃなかったか?まぁエンジンの選定に悩んでるような状態って聞いてたし、あまり健康的にビジョンがまとまってなかったんだろう。

「そこから引っ張ってくるそうです。」

「わかった、こころの準備しとく。まずは今のやつを整えてからで。」

「じゃぁ、よろしくお願いしま~す。」

 そう言って自席に戻って行った。

 

  やることが増えた。まだモックを作り始めて1日も終わってないのに。本実装の前だからまだいくらでもやりようはあるし、その分柔軟な仕様拡張への準備だってできる。「できた!」って言ってから「実は・・・」と後出しするよりはいい。と考えると、若干もやもやするが、今でよかったと納得することにしよう。

 作業を再開しようとモニターに目を向けると、メッセージが届いたというポップアップが画面の隅に現れた。誰だろう? 立木坂?

 

つづく